現代ポートフォリオ理論(MPT)とは?

「富裕層の資産運用法」、「この理論でノーベル賞を受賞している」、「高度な金融工学を利用しています」、などなど、現代ポートフォリオ理論には、かっこいい謳い文句が沢山ついています。

確かに現代ポートフォリオ理論を考案したハリー・マーコウィッツ氏は、1990年にこの理論によってノーベル経済学賞を受賞しました。

ところで、この現代ポートフォリオ理論(MPT)がどういう話なのかと言うと、「複数の投資先に分散投資をすることで、それぞれの値動きの違いから、リスクを低減させながら、リターンを下げない運用ができる」という考え方になります。

たとえば、投資先AとBが、同じリターン7%で運用ができると仮定します。

すると、このAとBに分散して投資をした場合、リターンはやっぱり7%になることが想定できます。

しかし、AとBは、リターンが7%であるとともに価格も変動しており、両方とも上下に50%程度の変動をしているとします。ただし、Aが50%上昇するとき、Bは50%下落し、逆にAが50%下落するときは、Bが50%上昇する、という関係性を持っているとします。

ちなみに、このような逆の値動きをしていることを、相関係数で-1と表現しています。

そして相関係数が-1のAとBは、ともに上下の値動きを相殺しているので、AとBを半分づつ組み合わせると、AとBの値動きは、互いに相殺されるので、AとBを組み合わせて投資を行うことで、全体としては値動きを抑えることができるというわけです。

つまりは、『分散投資を行うことで、投資先ごとの値動きを相殺して価格変動のリスクを小さくしながら、尚且つリターンは、元の資産のリターンをそのまま受け取ることができる』という理想的な運用を行うことができると考えたわけです。

確かに、この考え方は数学的には正解です。ノーベル賞を受賞するというのも間違いではないのでしょう。

しかし、「現実的にはどうなのでしょうか?」というのが私たちにとっては、一番重要なところです。

ちなみに、現代ポートフォリオ理論(MPT)を考えたハリー・マーコウィッツは、投資家ではなかったらしく、投資の経験はなかったとも言われています。

現代ポートフォリオ理論を駆使して、資産運用をする必要はない?

結論から言えば、現代ポートフォリオ理論を使って資産運用をするというのは、私たち個人投資家にとっては必要ないのかもしれないと思っています。

数学的には正しい理論であっても、現実の世界でどこまで通用するのか、もっと言えば、手間のかかる現代ポートフォリオ理論をつかう費用対効果の視点から見てどうなのかという点で疑問を感じています。

所詮、現実の世界でリターンを上げるために必要なことは、分散投資よりも集中投資であることは疑う余地がないと思っています。

たとえば、相関関係的に理想的とも言われている株式と債券に分散投資をするよりも、過去のパフォーマンスを見る限りでは、株式資産一択で投資をしたほうのがリターンは上です。

また、現代ポートフォリオ理論では、価格変動の度合い(ボラティリティ)をリスクと考えていますが、投資の神様とも言われている著名投資家のウォーレン・バフェットの話では、リスクとボラティリティを一緒に考えることは間違っているとのことです。つまり、バフェットにとっての現代ポートフォリオ理論は、その前提となる考え方自体が疑わしいと見ているらしいのです。

さらに、現代ポートフォリオ理論の根底にあるボラティリティと相関係数、これらの数値は、その時々でかなり変化しています。それまで値動きの小さかった資産が、突然大きな価格変動をするようになったり。また、今まで真逆の値動き(相関係数-1)だったものが、ある時から全く同じ動きをするようになったり(相関係数1)。という事がこれまでの相場を見ていると、決して珍しい事でもないと感じています。

となると、現代ポートフォリオ理論を現実の世界で実践するためには、常に相場の値動きのデータを集め、計算し、資産配分の管理と調整を行っていかなければならないということになります。果たしてこれが、個人レベルでできるものなのだろうか。面倒な作業をする割に、リターンが上がるわけでもない方法を(分散よりも集中の方がリターンは上がる)、いつまでも根気強く続けることはできるのだろうか。

ならば、個人レベルで難しいのなら運用会社にお願いすればいい。確かに現代ポートフォリオ理論を実践するための金融サービスは多々あります。中でも特に注目されているものと言えばロボアドバイザーサービスではないでしょうか。

しかし、これらのサービスも無料ではありません、それなりにコストがかかるものです。当然のことですが、個人レベルで出来ないことを代わりにやってもらうのだからコストがかかるのは当然です。

でも、現実の世界で現代ポートフォリオ理論を実践してもリターンは上がりません、むしろ下げてしまうぐらいです。確かに価格変動を調整して抑えてれるのかもしれませんが、その価格変動を抑えるという事にコストをかけてまでやる意味があるのだろうか?

個人レベルの投資に、それが必要なのかと考えると、必要ないのではないかと思うわけです。

個人レベルなら、自分の取れるリスクの範囲の中で、リターンを狙ってみるという方が合っているのではないかと思うのです。要は、掛けられる金額の範囲で、株式資産のような期待リターンの高い資産に投資をしてみるということです。言ってみれば、値動きやボラティリティといった話は、2の次です。

仮に現金などの安全資産と株式などのリスク資産で資産配分をすれば、現金の割合と株式の割合を調整するだけで、全体としての価格変動はある程度調整できるものです。複雑な計算をする現代ポートフォリオ理論よりも直感的にわかりやすく、自分で管理や調整することもできるので、コストがかかりません。

厳密に言えば、現代ポートフォリオ理論の方が細かくリスク調整が出来るのだとしても、その厳密さは本当に必要なものなのでしょうか。

はっきり言って、私たちの肌感覚としては、安全資産とリスク資産の資産配分のリスク調整と、現代ポートフォリオ理論のリスク調整に、ほとんど違いは感じないのではないかと思っています。みそ汁の塩分をちょっと減らしたとしても、ほとんど気づかないのと一緒の感覚です。

つまりは、現代ポートフォリオ理論は、不必要とまではいわないけれど、必要なのかと問われるとよくわからない方法のような気がするのです。

もっとわかりやすく、かつシンプルにやって、結果的に似たようなものになるのであれば、それでいいのではないかとも思うのです。

むしろその方が、他人任せにせずに、自分でできることが増えるため、最終的なパフォーマンスは良くなるのではないかとさえ思えます。

FP事務所あせっとびるだーずでは、難しい理論で運用することよりも、個人投資家レベルでも実践できる、わかりやすくシンプルな資産運用の方法をお教えしています。