お金のアドバイザー
お金のアドバイザーにもいろんな人がいる。
私たちの周りには、本当にたくさんのお金のアドバイザーたちがいます。
ファイナンシャルプランナーやマネーアドバイザー、銀行や証券会社といった金融機関の窓口担当や営業担当の人、保険会社の営業と保険代理店の人たち、経済評論家やアナリストなどと呼ばれている人たち。
そして最近では、政府主導のJ-FLECという組織も登場し、新しいお金のアドバイザー制度もでてきました。
お金に関するアドバイザーって、その名称は様々ですが、本当にたくさんいるものです。
逆に言えば、それだけお金の悩みを抱えている人が多いとも言えるのかもしれません。
そしてまた、アドバイザーとなることで、それだけお金の話が、稼げる分野でもあるということなのでしょう。
お金のアドバイスには疑わしいものが多い?
スマホやネットを見ても、あちらこちらでお金の話が表示されています。もちろんその中には、お金の専門家とうたっている人たちのアドバイスやコラムなども多く見かけます。
しかし、これらのコラムやニュースも、その記事の内容が、特定の金融商品を売るという目的につながっていることも多く、本当に有益な情報なのかどうか疑わしいことも少なくありません。
アドバイザーたちによるお金の話の目的は、そのほとんどが金融商品を販売や仲介することによって得られる手数料収入のためといっても過言ではありません。
金融商品を買ってもらったり、顧客を他者に紹介することによって入ってくる紹介料を得ようと、日々お客様との相談やセミナー講師、ネットや雑誌などへの記事作成などを行っています。
アドバイザーというと聞こえはいいですが、実際にはアドバイスをしているように見せかけて、自分の扱っている商品を買わせたいなどと考えていることが多いものです。
多くの場合において、お金のアドバイザーの話は聞いても損するだけのことも多く、富裕層などのお金の上手な扱い方を知っている人たちは、お金のアドバイザーのいう人の言う事を、真に受けたりはしないとも言われています。
お金のアドバイザーとしての『本当にやるべきこと』って何だろう。
お金のアドバイザーに答えを求めるのは間違い。
お金のアドバイザーに相談をするお客様のほとんどは、なんらかの『答え』を求めてアドバイザーのところに来ることが多いと感じています。
たとえば、「どの保険に加入したらいいのか」、「どの投資信託を買ったらいいのか」、「金額はいくら買ったらいいのか」、「iDeCoやNISAはやったほうが良いのか」、「どの保険を解約したらいいのか」、「今の投資信託は保有したままでいいのか、それとも売ったほうが良いのか」などなど。
とにかく、明確な答えをアドバイザーに示してほしいと思っているようです。
しかし、それらの質問への『明確な答え』は、専門家であってもまずできるはずがない、と思ったほうがいいです。
お金の話というのは、必ずメリットとデメリットが両方あるので、一概に「これが良いい」という答えをだせるものではありません。
一つのことを選択すれば、あることでは良いことがあるが、逆に他のところで悪いことがある。というのが普通なのです。お金に関する選択肢には、リスクとリターンが共存しています。
つまり、お金に関する答えというのは、その人の判断基準や価値観などで、どれが良くて、どれが悪いのか、という答えが大きく変わってくることになります。
たとえば、相談者のリスクの感じ方、ライフプラン、性格、経済状況、家庭環境、などなど、お金と直接関係ないようなところまで考えなければ、一番いい選択肢というのは判断できません。
お金に関する正しい選択という答えは、結果的に人それぞれのものになり、誰にでも通用する一つの答えがあるわけではありません。
仮に、本当に優秀なお金の専門家が行っているマネープランをそのまま真似しようとして、その専門家に「あなたのマネープランは、どんなことをしていますか?」と聞いて、その専門家が加入している保険、保有している投資信託などを教わったとしても、それらの商品が自分にとっても良い商品となることは、ほぼありえません。
これは、著名投資家の保有している株式を調べて、そのままそっくり買ったとしても、その著名投資家と同じ運用成績にはならないのと似ています。
優秀な専門家がやっていることを、その専門家ほどの知識やノウハウを持っていない人が真似することは、むしろ悪い結果になることの方が多かったりもします。
だからこそ、お金に事については、自分で判断できるようになるための、価値基準を持つことが大切になってくるわけです。
しかし、世の中には「自分には、お金のことを自分で判断するだけの知識も知恵もない」という人がいることもまた事実です。
特に日本では、いままでお金に関する教育を受けたことがないという人も多く、日本人のマネーリテラシーは先進国の中でも低いレベルにあると言われています。
政府主導ではじまった、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の目的も実はそこにあります。
金融商品の仲介や販売をする人を、アドバイザーとして認定しない制度となっており、お金のアドバイザーに完全な中立性を持たせるという試みです。金融商品の販売などの目的を持たない人たちによる、中立的な金融教育というのが、J-FLECの目的です。
しかし、現実問題として思うのは、その「商品を売らないアドバイザーとして、認定されたアドバイザー(J-FLEC認定アドバイザー)」が、金融商品を扱わずにに、税理士や行政書士などの他の士業にも劣らないほどの収入を作れるのかどうか、それがJ-FLECという組織の成否を決めることになる気がしています。
本当に有益な、お金のアドバイザー?
お金のアドバイザーがやるべきこととは、金融教育的なところを重視した、相談者に対して『答え』を提案するのではなく、お金に関する『価値基準の提供』なのではないかと思っています。
言い換えれば、提案ではなく、知識や知恵を与えることだと言えます。そして相談者自身で考え、判断できるように促すことだと考えています。
例えば、「生命保険を解約したい」という相談に対しては、「どういうことを考え、検討し、判断するといいのか」ということを話し合い、最後の結論はその相談の場ではなく、相談者が家に帰ってゆっくり自分の頭で考えられるようにすることなのではないかと思っています。
いろんなお金の相談を行ってきた中で、『答え』を求めて相談にくる相談者たちにも、実は「こうしたい」という具体的な目的を持っているというのを感じています。
ただ、その「こうしたい」というところがはっきりと見えていない。「こうしたい」と思っていてもできないと思ってしまっている。もしくは、何を疑問に感じているのか、もしくは不安に感じているのか、それがよくわかっていないということも多いようです。
だからこそアドバイザーとしてやることは、その『こうしたい』というイメージをはっきりさせていく、ぼんやりとしたものを整理整頓する場として話し合うことが、本当の意味で有益なお金の相談になるのではないかと思っています。
ズバリ言うなら、相談やアドバイスというよりも、マネー相談というのは、『コーチング』的な要素の方が強いのではないかと考えています。
あくまでも、お客様自身に考えてもらうことが大切であり、お金のアドバイザーとしてやるべきことは、そこに至るまでの『判断の材料』を、専門的として身につけた知識と経験から提供をさせてもらうことなのではないかと思っています。
もちろん、明らかに間違っていると思うお金のイメージや考え方には、それなりに正しいイメージになるよう切り替えてもらうことも、その役割の一つだと考えています。
最終的には、お金のことというのは、、自分自身で考えなければいけません。だれのアドバイスも考えるための材料にしかならず、結論そのものには何の影響も与えられないし、与えるべきではないのかもしれません。
どんなに優れた人のアドバイスであっても、相談者の価値基準や想定を外してしまうことはあるものです。そして問題は、その外れた時の対応は、アドバイザーではなく、相談者自身で行わなければいけないという所です。
著名投資家のウォーレン・バフェットの言葉の中にも、「自分の『能力の輪』を知り、その中にとどまること」という話があります。
その輪を外にでてしまえば、どんなに素晴らしいアドバイスであっても、うまくいかないと感じてしまうと、結局信用できなくなるものです。
だからこそ、自分の頭で考えるということがとても大切になってくるわけなのです。
アドバイザーは、正しい方法を提案するのではなく、相談者が自分で考えられるように、工夫して導いてあげることが、本当の意味で有益な『お金のアドバイス』になるのでないかと思っています。